働き方改革と就業規則⑬

働き方改革と就業規則⑬

▼派遣時給、3年で3割上げ
2019年7月18日付け日経新聞一面にこのような見出しが載りました。
同一労働同一賃金の原則を派遣社員にも反映させるための指針です。
ご承知のとおり派遣社員は3年で職場を変更しなければなりません。
職場が変更されると、これまで元の初年度の賃金に戻ってしまう
傾向がありました。しかし、厚労省指針では、同じ業務で
3年の経験を積んだ場合、次の職場に移っても、初年度より
賃金を3割上げるべきであるとの方針が打ち出されました。

▼日本の派遣社員の処遇は悪い?
一般にフルタイムの労働者の賃金を100とすると、
日本のパート労働者の賃金水準は57、フランスは89、
ドイツは79と西欧と比較して低い基準となっています
(日経:労働政策研究・研修機構)。それらの事情を踏まえ、
同一労働同一賃金の原則を活かすために、
このような指針が策定されました。
そして指針よれば、1年勤めて担当業務が経験に応じて上がる場合は、
働き始めたときに比べて16.0%増を目安とする。
3年後は31.9%増、5年後は38.8%が基準となるそうです。

▼理念はよいが、実際は?
このような指針は、派遣労働者にとって一応、朗報といえるところです。
ただ、懸念は、果たしてこのような指針は機能するのか?
ということです。派遣社員を利用している企業さんは、
当然、派遣会社に対して、派遣社員への支払分+派遣会社への
手数料を支払っています。今回の指針のように派遣社員も
ベテランになれば、他の職場にかわっても割増時給が確保される
ということは、ベテランの派遣社員を依頼する会社は、
それだけ多くの資金を支払うこととなります。
このような派遣の方よりも、時給の安い新任の派遣社員を望む、
という傾向となり、ベテランになればなるほど、
行先が見つからない、というようなことにもなりかねません
(人手不足ですから、そういうことにはならないかもしれませんが)。

▼ぜひ正規雇用を!
派遣社員に対しても、このように時給を上げるよう
法整備されていけば、当然に人件費は上がることとなります。
そもそも、正社員でも一般に3年で時給換算で3割増しなどという
給与体系を作れているところはかなり少ないのではないでしょうか。
このような指針は、派遣社員よりも正規社員雇用への
メッセージだと受け止めるべきだと思います。
3年で入れ替わってしまう派遣社員さんは、
会社にとっても社員さんにとってもメリットは
少ないのではないでしょうか。より長く人間関係を作っていく中で、
社員も成長し、会社も成長をしていくのが基本です。
この指針制定をきっかけに、派遣社員よりも正規社員雇用への
動きが高まることを期待します。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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