大切なのは、法律より感性
▼Gravity Paymentsという会社
2020年3月16日のNHK NEWS WEBに「Gravity Payments」
という会社のCEO Dan Price氏の記事が載っていました。
憶えていらっしゃる方もいるかと思いますが、2015年の4月、
シアトルにある「Gravity Payments」という会社で、
それまでの社員の最低年収が3万ドル(現在でいえば、約300万円)、
CEOの年間報酬額が100万ドル(約1億円)であったところ、
Dan Priceは、社員に最低年収7万ドル(約700万円)を
保証することとし、自らの報酬もそれに合わせて
年間7万ドル(約700万円)に減額しました。
当時は賛否両論だったと聞いています。
しかし、現在は、この取り組みを支持する顧客の増加、
社員の増加により、増益増収となっているそうです。
それにしてもすごい英断です。
▼Dan Priceの感性
NHKの記事によれば、ある時、CEOのDan Priceが、
自社の一人の女性社員が、夜にマクドナルドで働いているのを
偶々見かけたそうです。その女性は、お客さんから相談があれば、
早朝でも週末でも働いていた優秀な人財だったそうです。
その姿をみて、Dan Priceは、
「生活に欠かせない家賃、医療費、教育費などのニーズを確実に
満たすことができるような給与を与えることが、経営者には必要だ」
と思ったそうです。
それを実施しようと考えて、最終的に自分の報酬を
減額するしかないと思ったのでしょう。
私は到底このような決断ができるほどの人間にはなれませんが、
このような感性は持ちたいです。
▼法律より感性
社員の給与額について、法律では基本的に最低賃金しか定めていません。
現在の東京の最低賃金は1,013円です。
単純に週40時間、年間52週間働いたとして、
1,013×40×52=2,107,020円です。法律で保証しているのは、
年収210万円程度ということになります。
この法律をいくら守っても、「生活に欠かせない家賃、医療費、
教育費などのニーズを確実に満たすことができる」とはいえません。
つまり法律を守っていることは、適法かもしれませんが、
適切ではありません。法律を守る意識よりも、社員が最低限満足に
生活できる給与を渡そうという感性が大事だと思います。
(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)
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