「あきらめ」廃業をさせない
新型コロナウイルスの影響による倒産が話題となっていますが、心配なのは黒字経営であるにもかかわらず廃業を選ぶ中小零細企業が出てきたことです。
もともと団塊の世代が後期高齢者となる「2025年問題」が従前より話題となっており、中小企業庁によれば、2025年までに70歳を超える中小企業経営者は約245万人、その内の50%以上の経営者は後継者が未定だと言われていました。
ところが今回の緊急事態宣言による自粛を受けて、これが急速に早まりそうです。「あと5年か」などと思っていた経営者が、自粛という後ろ向きな社会情勢の中で、時間が出来てしまい、将来を色々考えている内に、「もういいか」「やめちゃうか」と思い、この期に廃業を選択してしまうという事態です。
2020年5月31日の日経新聞には、2020年中に廃業、解散する中小企業は5万件にのぼると推定していました。
もっとも2019年度の中小企業白書によれば、2018年の休廃業・解散件数は、46,724件であり、新型コロナウイルスがなかったとしても、2020年は5万件程度の廃業・解散を見込んでいたことなりますから、今年の実数は5万件を遙かに超える可能性が高いといえます。
「あきらめ」廃業の原因の多くは、後継者がいないことに尽きます。
政府は遅ればせながら2020年6月12日「中小企業成長促進法」を成立させました。後継者となりたがる人がいない理由の一つとなっていた借入金の連帯保証について、信用保証協会が肩代わりをすることにより、後継者には会社の借入の連帯保証をしないで済む制度が新設されました。
民間でも、学会の会員である水沼啓幸さんが代表を務める株式会社サクシードさんが進める地域企業間の婚活サイト「ツグナラTOCHGI」のような取り組みも始まっています。
大量の休廃業が始まるのであれば、時間的余裕はありません。健全経営をしてきた企業の承継を優先するというような一種のトリアージも必要かもしれません。事業継続の可能性は必ずあります。
何より大切なのは、廃業を考える経営者を孤立化させず、経営者仲間、地域で助け合いながら、将来の展望を共に語らうことです。
経営者団体の活動も新型コロナウイルスの影響でままならず、また高齢の経営者の中にはオンラインでの会合等に参加することも苦手な方がいらっしゃると思います。今後の課題はそのような方々を孤立化させないための、アイディアも早急に必要となるのではないでしょうか。
(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)
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