ぽっちゃり企業

2020年7月20日・27日号の日経ビジネスの表紙は、「危機に強い ぽっちゃり企業」です。とても親近感のわく表題ですが、もちろん私の体型のことではありません。

いわば資本効率や株主価値を重視してきた「筋肉質な経営」は、「選択と集中」「持たざる経営」を指向し、極端にまでスリム化を進めようとしてきました。それが良いと評価されてきました。しかし、日経ビジネスは、コロナ禍により、このように「筋肉質な経営」を指向してきた企業が、むしろ「余裕なき企業」として危機に立たされていると警告しています。

 これら「筋肉質な経営」の企業は、坂本光司先生がいつもやってはいけない経営の第一番に挙げる業績重視の企業のことです。

 しかし、コロナ禍はこのような筋肉質な業績重視の企業だけでなく、スマートにスリム化していた企業にも襲いかかりました。6月30日の「ガイアの夜明け」で紹介された佰食屋さんです佰食屋さんは、京都の行列ができるステーキ丼のお店として有名になりました。それだけではなく、オーナーの中村朱美さんは、飲食業で働く人々の日常の生活を大切にしようと利益追求よりも社員にとって働きやすい会社、飲食店を目指し、1日にお客様に提供する丼は100食と限定し、売切れ御免で店舗を閉める経営をしてきました。それらの経営手法が多くの人を感動させ、話題にもなりました。しかし、余分な売上げを作らない経営は、不測の事態には十分に対応できませんでした。やむを得なく一部の店舗を閉め、大切な社員の一部を手放さなければならなくなりました。苦渋の選択だったと思います。成長途上に受けた災難でした。しかし中村朱美さんは、元気にめげずに、今回の結果を糧として、よりよい経営を行っていくものと思います。

 このように、今回のコロナ禍は、業績重視の企業だけでなく、人を大切にしてきたもののスマート、スリムな企業にも大きな損失を与えました。

 やはり「ぽっちゃり」がいいのです。「ぽっちゃり」とは肥満とは違います。日経ビジネスでは、やみくもに資金をため込んだり、業務に潜む無駄をおざなりにするのではなく、「短期的な収益に拘泥せず、強みを磨いたり、将来の変革に向けて手厚く資源を割いたりする、攻めの経営」こそ「ぽっちゃり」経営と呼んでいます。

 そういえば、医師である鎌田實先生も「ちょい太でだいじょうぶ」という本を書いておられました。自己資本率が高い、1年以上は何があっても経営を維持できる内部留保金をもっている、社員教育に多くの資金を投入している、こういう企業が「ぽっちゃり」「ちょい太」経営の会社です。

 最近の日経ビジネスが、このような記事を多く書くようになったことは感慨無量です。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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