「ワーケーション」は必要か?

観光支援事業「Co To トラベル」の混乱を挽回し、観光産業にてこ入れをするために「ワーケーション」を積極的に打ち出すそうです。7月27日管官房長官は政府の観光戦略実行推進会議で、「新しい旅行や働き方のスタイルとして支援していく」と発言したとあります(2020年7月29日東京新聞)。

 ワーケーションとは、「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」とを組み合わせた用語であり、一般的にはリゾート地などに滞在しながら、テレワークで仕事をすることなどを意味すると言われています。

 経営者の方は、24時間、365日、経営のことを考えており、休暇の時も頭の中には経営のことがいつも渦巻いていることと思います。私ども弁護士も同じようにいつも仕事のことを考えています。

 しかし一般の社員も同じような生活をすべきだとは思えません。休暇のときも仕事をことが頭を離れず、悶々とした中で休暇を過ごすことが、「新しい働き方」といえるでしょうか。

 政府は、また見切り発車で中途半端な政策を推進しようとしているとしかいいようがありません。

 そもそも以前から何回か指摘をしています通り、日本の労基法では1日8時間、週40時間というように、時間で労働を管理する仕組みになっています(裁量労働は若干異なりますが)。就業規則の絶対的記載事項、つまり必ず記載しなければならない事項には、「始業及び終業の時刻、休暇時間、休日、休暇並びに労働者を2組以上に分けて就業させる場合においては就業時転換に関する事項」というようにあくまで「時間」で労働を管理することを大原則としているのです。

仮に有給休暇をとって家族とリゾート地に行き、午前中は仕事をしたり、オンライン会議に臨んだりした場合、休暇と仕事をどのように区分するのでしょうか。時間単位当たりの有休という概念はあるので、仕事をしていない時間は時間当たりで計算した有給を利用するとして、それ以外は労働とするのでしょうか。

 フルタイムのテレワークよりも把握が難しくなります。ワーケーションも「ジョブ型」の働き方には親和性がありますが、日本においてはそもそも労働概念そのものを根本から考え直さなければなりません。

 またテレワークをする際には、どこで行うかは重要です。テレワークの多くはWEBを利用します。リゾート地では、情報セキュリティーの問題も大きな課題です。通常、在宅勤務等の就業規則を作成する場合には、どこで就労するかを特定することは重要なことと言われています。

 そしてそもそも労基法は、労働と私生活の区別ない状態を想定していません。

 労災が適用されるかどうかについても、問題です。労災が適用されるためには業務に起因(業務が原因)と言えなければなりません。会社にいれば概ね業務に起因したとして労災は認められやすいですが、テレワークの場合は業務に起因していたという証明が難しい場合が出てくると思います。

まして、リゾート地で休暇中に被災した場合、テレワーク中に被災したとしても、労災が適用されるかどうかは、なかなか難しい問題です。

このように法律は全く今の時代に追いついていません。そのような中で、法的整備もしないまま、観光戦略としてワーケーションを推進するとするのであれば、あまりにも政府は無責任ではないかと思わざるを得ないのです。 (学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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