「ビジネスと人権」という考え方

「ビジネス」と「人権」というワードは、中小企業法務に携わっている私どもには、あまり一緒に並べない言葉、悪く言えば「水」と「油」のように感じるイメージがあります。もちろん、ビジネスの中にも人権が必要なことは当然ですが、あえてそれを対置することはあまりなかったと思います。

 しかし、SDGs、ESGの時代となり、「ビジネスと人権」が対置されるようになってきました。2020年は日本政府により「ビジネスと人権に関する行動計画」(National Action Plan)の発表が予定されています。現在外務省で意見聴取をしています。それに先駆けて、2019年12月、企業家、投資家、一般市民、専門家、法律家、公的機関等の様々な人が参加してつくる「責任ある企業行動及びサプライ・チェーン研究会」が、「責任ある企業行動及びサプライ・チェーン推進のための対話救済ガイドライン(第1版)」を発表しました。このガイドラインは、現在行われている各企業の内部通報制度やクレーム処理制度を、企業内に留めず、広く社会の中で位置付けることによって企業にかかわる苦情処理・問題解決制度(グリーバンス・メカニズム)を強化・発展するための指針として提示されたものだそうです。将来的には対話・相互理解に基づく苦情処理問題解決センターの設置を目指しているようです。

 私は、この活動には全く関わっておりませんが、このような仕組みが確立していくことはとても重要なことだと思っています。

 しかし私は、できるだけ事後的な紛争解決という手法ではなく、日々の生活や仕事において、企業が社員や社外社員を大切にすることによって、紛争自体を生じさせない努力に力を注ぎたいと思っています。

 憲法は、11条で「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と規定されています。その上で、13条において「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」とされています。

 人権が尊重されることが当たり前の企業文化を醸成していくことが最も重要です。「人を大切にする」ということは、まさに苦情処理・問題解決という視点ではなく、そもそも苦情を生まない、問題を生じさせない企業活動を目指しているのではないかと思うのです。

 (学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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