意外と身近な独禁法の今後

経産省が「えっ?!これってカルテルなの??」という小冊子を出しています。ご覧になられた方も多いと思います。たとえば、懇親会の席上で、

A「最近〇〇の原材料上がっているよねえ。」

B「そう。もう価格上げないとやってられないよ。」

A「内は来月から、100円上げようと思っているんだ。」

その後、A社だけでなく、B社も100円値上げをした場合、仮に明確な合意がなされていなくても、暗黙の合意がなされたと認定されて、独禁法違反となってしまう場合があります。また事業者団体が、所属する会員の販売価格について、基準価格や料金表を作成し、交付することも独禁法に違反するといわれていま す。

 このように同業者との間で価格等を話し合うことは、ニュースで報道されるような大手企業の談合ほどの明確なものではなくても、独禁法違反とされてしまうものがあります。

 でも、どんなに小さな集団でも、事業を守るために協議することは、徒に消費者を害することのない小さな集団でも全て独禁法違反になってしまうのか、というとそうではありません。

 例外として、独禁法を適用しない場合があります。たとえば、農業協同組合や中小企業協同組合のように小規模事業者の集まりである組合の行為は適用されません。

 また一部の事業について、法律でカルテルが例外的に認められる場合があります。

 では、SDGsのために事業体で合意をすることは独禁法違反になるのでしょうか。日経新聞でも紹介されていますが、オランダで鶏肉の生産業者とスーパーとが、飼育環境に配慮した鶏肉のみを扱うことを合意したケース、1980年代に建設された5つの石炭発電所を閉鎖する発電事業者の合意について、日本の独禁法と同じような法律に違反するとして処分をしました。しかし、これに対して、国内の事業者のみならず環境保護団体などの市民団体からも批判が相次ぎ、法律改正を検討しなければならない事態となりました。

 日本の法律も原則はカルテルは違法、例外的に認められる場合があるという建付けになっていますので、このようにカルテル(合意)がSDGsのような社会全体の利益には質するが、個別の消費者には価格が値上がりするなど不利益が及ぶような場合にどうするのか、今の法律ではうまく適用できない問題が生じています。

 SDGsの促進のためには、適切なルールに基づく一定の合意を有効とするようなバランスを取った規定が必要です。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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