No183記憶に残る書籍『1坪の奇跡』著者;小ざさ社長 稲垣篤子(東京都武蔵野市;和菓子店)

今週は東京都武蔵野市JR吉祥寺駅から徒歩数分に立地し、1坪という狭小店舗で、しかも2種類の商品しか扱っていないにもかかわらず行列の絶えない和菓子屋;小ざささんです。2代目の社長;稲垣篤子さんが執筆された書籍をご紹介いたします。

この書籍『1坪の奇跡』は稲垣篤子さんの半生を描いた自伝になっています。小ざさの創業は稲垣篤子さんのお父様;伊神照男さん(1902年生まれ)が、小ざさの前身となるナルミ屋を1931年吉祥寺に創業したことから始まっています。

本書では、父;照男さんがたどり着いた究極の羊羹ともいえる味へのこだわりや、職人として娘;篤子さんに受け継いでいく姿に圧倒されるばかりです。父娘の親子関係と職人としての関係、誰にもまねできないほどに極めた羊羹の味を守り続ける姿が目の当たりにでき、どんどん引き込まれていく内容となっています。

特に印象的だったこと

〇なんといっても羊羹の味へのこだわりです。職人として常に感性を磨き続け、マニュアルではなく五感を最大限に追求した羊羹作りは想像をはるかに超え、日々真剣勝負の世界です。一般的に羊羹は普通の羊羹、芋羊羹、錦玉、水羊羹の4種ありますが、小ざさでは、“4種の交点をつかまえる味”を目指しているのです。その感覚をつかむことへのこだわりを本書では感じることができます。

小ざさでは商売を進めるにあたって仕入先を家族や共同体と考え、小ざさの考え方をしっかりと伝えたうえで、ともによい品質を守っていることです。例えば小豆問屋さんと品質へのこだわりや、もなかの皮をつくっている外部の職人さん、自然由来の材料にこだわり続けるもなかの包装紙メーカーさん、小豆を練る際になくてはならない炭メーカーさんなど、小ざさ社内ではやらない・できない仕事をしてくれるパートナーとの関係は、良いものを作り続けるためにあり、決して価格や便利な商品に安易に変えることがないのです。

〇さらに30年以上も前に熱心な養護学校の先生のお誘いがきっかけとなり障がい者雇用を始めていることです。本書執筆の時点では約30名の社員中3名が障がい者でした。しかも助成金の申請は敢えてすることなく、一般社員としてのお給料となっています。

本書では、戦前戦後という厳しい時代背景の中、創業者;伊神照男さんの思いが生んだ羊羹という芸術、そして実の娘である稲垣篤子さんが感性を注ぎ込んで体得し到達した世界なのだと実感することができます。

また文章は洗練されていて言葉が豊かです。女性のさまざまな立場や視点としての思いが詰まっていると感じました。何を大切にして生きるのか、とても参考になる書籍ですので、是非多くの方に読んで欲しい本です。

***補足***

この投稿では「法政大学大学院 政策創造研究科 坂本研究室」や「人を大切にする経営学会」での経験をもとに毎週火曜日にお届けしております。個人的な認識をもとにした投稿になりますので、間違いや誤解をまねく表現等あった場合はご容赦いただければ幸いです。(人を大切にする経営学会会員;桝谷光洋)

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