経営理念の徹底

私は従前から、就業規則に経営理念をきちんと位置付け、就業規則の解釈も経営理念に基づいて解釈するようにしたらいいのではないか、と提案をしております。就業規則とは主に社員の就業に関しての約束事であるものの、経営者側も当然に就業規則に記載された内容を守る責任があると位置付けられますが、これはあくまで内部的な契約に過ぎません。この点で、就業規則のみでは不完全ではないかと思っておりました。

 今般、医薬品メーカーのE社の定款の記事が出ていました。通常定款は、第1条 商号、第2条 目的、第3条 本店の所在地、と並んでします。

 ところが、このE社は、第2条に経営理念を入れています。

 ホームページ上で公になっている定款ですので、ここに引用すると次のように記載されています。

(企業理念)

第2条 本会社は、患者様とそのご家族の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネ フィット向上に貢献することを企業理念と定め、この企業理念のもと ヒューマン・ヘルスケア (hhc) 企業をめざす。

 2  本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利 益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。

3 本会社は、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々の活動の根 幹に据え、社会的責任の遂行に努める。

4 本会社の主要なステークホルダーズは、患者様と生活者の皆様、株主 の皆様および社員である。本会社は、以下を旨としてステークホルダーズの価値増大をはかるとともに良好な関係の発展・維持に努める。

1.未だ満たされていない医療ニーズの充足、高品質製品の安定供給、薬剤の安全性と有効性を含む有用性情報の伝達

2.経営情報の適時開示、企業価値の向上、積極的な株主還元

3.安定的な雇用の確保、やりがいのある仕事の提供、能力開発機会の充実

 この理念で重要な点が2つあります。

一つ目は、「本会社の使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考える。」との点です。利益は結果である、いつも坂本先生がおっしゃっている考えが見て取れます。

二つ目は、会社のステークホルダーズとして、患者様(顧客)と生活者(世の中の方々、社会)、株主、そして社員としているところです。

 できれば、株主と社員の位置を変更してほしいところではありますが。

 定款とは、まさに株主と経営者との約束事であり、株主も経営者は定款の内容に縛られます。

この記事を見て、経営理念を定款に記載するということは、経営理念を就業規則に記載するとは全く異なった重要な意味をもっていると気付かされました。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です