自己超越欲求の高みに向けて

マズローの欲求段階説は、「人を大切にする経営」ではよく論じられているテーマです。

 5段階は、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現欲求といわれています。これらが満たされれば、実生活において幸福に感じることができるそうです。しかし、これらは全て自己に向けた欲求です。厳しい言い方をすれば、いずれも利己欲求に過ぎません。そのため、これらの欲求を全て満たしても、心からの充足感を得られないのではないかと言われています。

 なぜならば、人の幸せは自分一人で完結するものではなく、他者とのかかわりにおいてしか感じることが出来ないからです。そのため、他者の存在を前提とする必要のない自己(利己)欲求が満たされても、幸せに満ちることができないのではないかと思うのです。

 そこで出てくるのが、マズローの欲求第6段階です。自己超越欲求と言われています。自己を超越するということは、まさに利他欲求といっても過言ではありません。人のために、自分ができることをする、これこそが他者とのかかわりの中で感じることができる幸福感なのだと思います。

 このように思うと、「人を大切にする経営」が提唱している5人を大切にするということは、まさに自己超越欲求を満たすことを言います。誰が5人を大切にするのか、といえば当然、経営者が5人を大切にするのですが、社員とその家族は、社外社員とその家族、既存・未来顧客、社会的弱者や地域社会を大切にすることを意味します。「我が社」に関わる全ての人が、自分事(利己)ではなく、他人事(利他)の思いをもって生きていくことが、世の中全体を幸せにすることに繋がっていくのだと思います。会社内の社員の多くが、この第6段階(自己超越欲求)に至っている会社が、まさに人を大切にする会社大賞の受賞企業なのだと思います。

 しかしマズローの欲求段階悦が示すように人はそれぞれの段階を一歩ずつしかのぼっていけません。いきなり飛び級で安全欲求から自己超越欲求の段階に至ることはないのです。ですから我々経営者は、社員の5段階の成長を見守り、育て、最後に社員が利他の欲求である第6段階に至るようにしなければならないのだと思います。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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