デジタルに翻弄されずに

コロナ時代の影響で私たちの業務にもデジタル化、オンライン化が加速しています。3年後には、裁判所への書面提出を弁護士はオンライン化が義務化されるとのことです。

 思えば、私が大学を卒業した35年前、やっとワープロが広がり始めた頃でした。手書きの文章がワープロを使うようになり、文体も言葉遣いも微妙に変化したことを自覚していました。今はほとんど直筆で長い文章を書くことはありません。

 私たちの仕事には書籍が欠かせません。法律に関する書籍は、値段が高く、また法律が変わる度に改訂版を購入しなければなりません。事務所には大きな書棚が必要でした。しかし、今はオンラインの電子書籍をサブスクで購読することができます。ログインをして、検索画面にキーワードを記載すると、そのキーワードを記載している書籍が複数表示され、キーワードにアンダーラインを引いた状態で、簡易に閲覧でき、その要旨をクリックすると、本文が見られる仕組みになっています。もとより情報に漏れがあってはいけません。出来るだけ、多くの書籍をチェックできることは、仕事の効率を高めてくれます。

 でも、私は、やはり、このような検索により、該当部分のみを読み込む方法には違和感を持ってしまいます。何か、確からしさが足りない気がするのです。法律は、その法律を作った制度の趣旨があり、その思想に基づいて、様々な条文が規定され、その解釈がなされます。リアルな書籍を手に取り、該当箇所はパラパラめくりながら探す。その時に不意に目に入った直接には探している内容とは関連しない内容の中に、思考を深めてくれる記載があったりします。

 デジタルは、どんどん加速しています。若い弁護士の中には、パソコンだけで、仕事の90%をカバーできるという人もいます。私も何とか時代について行きたいと思ってはいます。一方で、それでもなお、多少迂遠となろうとも、アナログ、リアルと共に生きていきたいと思います。「不易流行」難しいですが、それを実践していきたいと思っています。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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