パブリック・ベネフィット・コーポレーションという考え方

前回に引き続きカタカナ文字です。

パブリック・ベネフィット・コーポレーション(PBC)は、ご承知の方も多いと思いますが、アメリカにおける企業形態の一つです。経済的利益だけでなく、社会や環境などの公共の利益を生み出す企業に適用される法人格で、各州で法制化されています。2022年2月現在、30州に広がっています。現在、アメリカでは、約7700社存在するそうです。

PBCは州によって設立要件が少しずつ違うそうですが、いずれの会社もステークホルダーへの貢献に加えて、社会の課題解決を事業の目的にしています。第三者機関の認定に加え、会社の定款にも社会課題解決の事業目的を明記することを求められます。また毎年、社会課題解決のためにいかなる事業を実践してきたかを記載した年次報告書の提出を求められます。そして取締役の義務として、株主だけではなく、「公共の利益」を考慮する責任を負わせ、公益に沿う経営をしない取締役は解任される可能性もあります。

日経新聞によると、ナスダック市場に上場しているローリエイト・エデュケーション(教育関連の企業)は年次報告書において、「特定の公益への貢献を重視することが、業績に悪影響をもたらす可能性がある。」として、公益を優先する判断をしたことを明記したそうです。

坂本先生は、常々、会社は社会の公器であり、社員とその家族、社外社員とその家族、現在及び依頼顧客、そして地域社会(社会的弱者)、その後の株主という順番で会社の周囲の人を大切にすべきとして、株主よりも地域社会(社会的弱者)を優先するよう求めています。

人を大切にする会社は、アメリカのようなPBCの認定によることなく、社会貢献を実践している会社であり、PBCの要件を満たす会社だといえるのだと思います。時代は、急速に人を大切にする経営の時代に向かって進んでいます。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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