社員全員でパワハラ研修を

今年改正法の施行によりパワハラ研修をする機会が増えました。しかし、研修に出られる方は、経営者、役員、人事・総務等の責任者など経営側の方がほとんどで社員が研修に出られることはほとんどありません。もしかすると、社員に知恵がつくことを恐れる会社があるのかもしれません。

しかし一方で、経営側からは、パワハラと指摘されることを忖度して、社員に業務命令を出したり、十分な社員の指導ができなかったりしている、との話をお聞きすることもあります。

よく(株)日本レーザーの近藤宣之会長が「社員を大切にすること、甘やかすことは違う」とおっしゃっていますが、パワハラも忖度をし、社員に気を遣うことと、社員を大切にすることは違うと考えるべきだと思っています。

パワハラには法律的にきちんとした定義があります。

パワハラとは、①職場において行われる、②優越的な関係を背景とした言動であって、③業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、④その雇用する就業環境が害されること、です。

「職場」とは、言い換えると「仕事の場」ですので、実際に会社の中に限らず、「仕事の場」と評価されるところを含みます。つまり懇親会等が会社で行われているような場合は、その飲食の場も「職場」となります。

「優越的な関係」とは、上司と部下との関係だけでなく、同僚同士や場合によっては部下の方が優越的な場合もあり得ます。

難しいのは「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」かどうかです。

「業務上必要」というのは、比較的分かりやすいと思います。業務命令や指導等は当然に業務上必要なものです。

「相当な範囲を超えた」という基準が難しいところです。相当な範囲には一定の幅があります。ある程度厳しく指導することもここには含まれます。分かりやすい判断基準は、「感情的にならない」ということだろうと思います。とはいえ、人間ですから、ついつい感情的になってしまうことはあります。思わず怒鳴ってしまった、その1回をとらえて「相当な範囲を超えた」とはいえないのではないでしょうか。一方で、怒りやすく、絶えず怒鳴っているような場合には、相当な範囲を超えた、となる可能性が高いです。

最後に「職業環境が害されること」が必要となります。この点は、前述した思わず怒鳴ってしまっただけでは、職場環境が害されるとまではいえないケースがほとんどだと思います。

たまたま多少厳しい口調で言われたとしても、それが的を得た指導であったり、業務命令であれば、パワハラとまではいえない、ということ、どこからパワハラになるかということについて、社内で共通認識を持てるようになることが重要です。そのためにも社員全員でパワハラ研修を実施することをお勧めします。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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