服務規定の定め方について

就業規則の服務規程、遵守規定については、様々な規定がありますが、それらの規定は基本的に「●●をしてはならない」「●●はしない」というように禁止規定として定められています。たとえば次のような記載です。

① 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用しないこと。

② 職務に関連して自己の利益を図り、又は他より不当に金品を借用し、若しくは贈

与を受ける等不正な行為を行わないこと。

③ 勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと。

④ 酒気を帯びて就業しないこと。

 よく④のような「酒気を帯びて就業しない」などという服務規程をみると、この会社、過去に酒気を帯びて仕事をしていた人がいるのかなあ、などと思ってしまったりします。

 もともと就業規則の歴史は、工場のラインをいかに効率よく動かすかに主眼がおかれたルールでした。そのなごりか、酒気帯びなどの規定が残っていたりします。しかし、これでは社員も服務規程を尊重しようなどとは思わないのではないでしょうか。

 話は変わりますが、私は下手ですが、たまにゴルフをすることがあります。「池にいれてはいけない」と思うと、不思議なことに、必ずとっていいほど池にはいってしまいます。私の技術の問題が90%ですが、こういうことはよくあるらしく、ゴルフのメンタルの本などには、この例が出ています。その説明として、真偽のほどはわかりませんが、人間の脳は、否定を認識できないので、「池にいれてはならない」と自分の脳に命じても「池」のみが認識されてしまい、そこに集中してしまうというのです。

 確かに禁止条項は言語として分かりづらい面があります。英語であれば、「not」がついているかいないかだけの区別しかできません。

 服務規程のあるべき姿は、否定型、禁止規定にしないことです。

たとえば、先の例を変更するとすれば、

① 会社の施設、物品等は職務に関してのみ使用すること。

② 職務は、会社、他の社員、社外社員、お客様、株主の利益を優先すること。

③ 勤務中は適切な職務場所で職務に専念すること。

 ずいぶん、見え方が変わってくるのではないでしょうか。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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