慢心をしない

会社は、人と同じように日々の社会の流れの中で変化をしつつ成長をしていくものだと思います。その中で、ちょっと手を抜けば思わぬところで足をすくわれるのも人生と同じだと思うのです。

 昨年は、品質不正の三菱電機、データ不正を行った日野自動車、営業秘密不正持ち出しのカッパ・クリエイト、オリンピック贈収賄のAOKIホールディングス、そして今年になって研究データねつ造の報道がありました。

 どの企業も不正を目的に経営をしている会社はありません。しかしそれでも不正が生じてしまうのは、経営側に何らかの慢心があるのではないかと思うのです。

 2011年3月11日、東日本大震災により東京電力の原子力発電所で過酷事故が発生しました。原発は、原子炉を冷却する必要があり、そのために電気が必要となります。電源には交流電源と直流電源の2系統がありますが、福島第一原発では、その電源設備をまとめて水が漏れいらないような仕組みを施していない地下に設置していました。今回の事故は、津波による水が電源設備内に浸透し、全電源を失うことになってしまい原子炉を冷却できなくなったことが原因でした。

日本政府は、日本の電子力発電所は事故が起こることはないという「安全神話」を盛んに世の中に流布していました。その間に、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故などの大きな事故が海外では起こりました。世界各国は、原発の基準を厳しく見直してきましたが、日本はその都度、見直しをせず判断を先延ばしにしました。

国は、電源喪失については、「短時間の全交流電源喪失」のみを指針として示し、直流を含む電源全部が長時間喪失することがないように設計をすることを指針としませんでした。また今回のような過酷事故は、「現実に起こることは考えられないほど発生の可能性は十分小さい」として、何の対策も講じていませんでした。まさに慢心といわれても仕方のないことです。

時代は動いていきます。企業も変化していきます。その変化に合わせて適時に適切な対応を心がけていないと問題が発生してしまいます。我が社で「不正が発生するはずはない」、という慢心が一番危険なのだと思います。

「慢心をしない」は今年の自分のチェックリストに載せておきたいと思います。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です