インボイス制度と下請法

10月からのインボイス制度実施にむけて既に準備をされていると思います。消費税増税の際にも、消費税増税にからむ下請法違反の指摘がなされておりました。インボイス制度実施に関しても下請法との関係で注意喚起がなされています。

 インボイス制度実施にあたって、特に個人事業主やフリーランスに業務委託をするような場合には、次のような注意が必要です。個人事業主やフリーランスの方に業務委託をする場合、依頼主が1000万円を超える資本金の会社であれば、これらの者との関係は、下請法の対象になります。これはフリーランスでも同様です。

 公取委からは3つの類型で注意を喚起しています。

まず1つは、取引先(下請先)が免税事業者であった場合、契約時には消費税を含めて代金額としていたものを、免税事業者だからといって、消費税分を支払わないよう支払条件を変更することは、下請法違反になります。免税はあくまで諸費税の納付を免除されているにすぎず、消費税を請求することはできるのであって、これを免税事業者であることを理由に一方的に消費税分を減額することは、代金の減額にあたり許されないことになります。

 2つめは、継続的取引をしている事業者に対して、当初は消費税相当額の支払をしない代金設定をしていたところ、その事業者がインボイス登録をし、課税事業者となり、消費税分の支払を求めてきたにもかかわらず、従前のまま消費税相当額の支払をしない代金設定のまま価格据え置きをした場合は、「買いたたき」に該当し下請法違反となります。

 3つめは、当社の事務処理の関係から、取引先(下請先)に対して、インボイス登録を求め、たとえば「インボイス事業者にならなければ、消費税分は支払ません。承諾いただけなければお取引は考えさせていただきます。」というような文言を用いて要請書を出すなどの行為は、独占禁止法違反となるおそれが高くなります。

 このようにインボイス制度に関して取引先(下請先)に強硬な手段をとることは下請法違反や独占禁止法違反となるおそれがありますので、対応には十分に気をつけてください。

 もとより取引先の社員とその家族を大切にしている人本経営実践会社には杞憂なことと思いますが、周りの経営者にも是非共有して頂きたいと思います。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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