テレワークの就業場所の特定の重要性

テレワークの就業場所としては、①在宅勤務、②サテライトオフィス勤務(シェアオフィス、コワーキングスペースなど)、③モバイル勤務(自由な形態、ワーケーションなども服務)の3類型が考えられます。

 厚労省のモデル就業規則では、テレワーク勤務の規定として、「在宅勤務とは、従業員の自宅、その他自宅に準じる場所(会社が認めた場所に限る。)において情報通信機器を利用した業務をいう。」等と定められています。また③のモバイル勤務の規定は、「モバイル勤務とは、在宅勤務及びサテライトオフィス勤務で、かつ社外で情報通信機器を利用した業務をいう。」としています。

 もっともこのモデル就業規則ではモバイル勤務について、在宅勤務規定のように「会社が認めた場所に限る」との文言が記載されていませんが、やはり、テレワークの就業場所については「会社が認めた場所に限る」旨の規定を入れておいた方がいいと考えます。

 1つはセキュリティーの問題です。サテライトオフィスは一般の会員制のところでも、セキュリティーの弱い公衆無線LANを仕様しているケースが多く、利用に伴う情報漏洩リスクが高くなるケースが多いです。したがって、セキュリティー上も問題ない方法(公衆無線LANは使用しない等)の定めを規定するか、又は会社が就業場所自体を特定し、確認したものだけを許す等の運用が必要となります。

 またこのように就業場所の特定をしておくことは、労災等の関係でも有効です。たとえば、自宅から会社ではなくコワーキングスペースへ移動しているときに事故に遭った場合、通勤災害が認められるかという問題が生じます。

 労災が認めている通勤災害とは、①住居と就業の場所との間の往復、②就業の場所から他の就業の場所への移動、③①の往復の先行または後続する住居間の移動を、合理的な経路および方法により行うことをいいます(労災保険法7条2項)。この経路を逸脱したり中断した場合は原則として通勤災害は認められません。なお、逸脱や中断が日用品の購入、職業訓練、選挙権の行使、病院での診療、一定の近親者の介護といった最小限度のものである場合は、逸脱または中段の間を除いて通勤とされています(同法7条3項、同法規則8条)。

 よく、会社からの帰り道で友人と飲酒をしたような場合には、中断が認められ、その後帰宅する際の事故は通勤災害が認められないということになります。

 そこでテレワークとの関係でみれば、コワーキングスペースが就労場所として認められていれば、自宅とコワーキングスペースとの間の合理的な経路および方法による移動は通勤災害の適用を受けることになります。

 このような場合、その疎明がしやすいようにするためにも、就労場所は、会社が認めた場所としておいた方がいいということになります。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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