”人を大切にする経営”への挑戦

「企業は利潤追求を目的とし、人格を認められた存在だ」という言葉は、数年前、私が事業責任者を務めていたとき、社内研修で発したものです。当時の私は、自身の役割に期待されることの実行に追われ、人の評価を基準に自己認識を持つ、そんな人間でした。

しかし、ある時、自分自身でも気づかなかった心の底からの叫び声を聞く機会がありました。「なぜ私だけが…」「私は幸せになりたい…」その声に触れたとき、私の中にはさまざまな疑問が湧き上がりました。私の現状は本当に幸せなのだろうか?確かに、仕事があり、経済的にはそれなりに余裕もあり、家族がいて、家もある。しかし、何か物足りなさを感じていました。

それから初めて、自分にとっての「幸せ」とは何なのか、真剣に向き合うことになりました。現時点での私の幸せとは、周りの人が充実して笑顔でいる場に共にいること。

そして、そのために会社のビジョンを進化させ、共に力を尽くしてくれる仲間も増えてきました。

2020年、創業者から代表の座を引き継ぎ、経営者となった私は、事業執行を頼りになる仲間に任せ、創業者から言われた言葉に深く思いを馳せるようになりました。「自分の不安を埋めるために事業に手を出すな。それは経営ではないよ。」

「経営」とは何かを模索する中で、仏教用語の「経(正しいこと・真理)を営む」からヒントを得て、企業にとっての正しいこととは何なのか、経験豊富な先輩経営者に相談しました。それがきっかけとなり、坂本先生の経営学に触れ、人財塾の門を叩くこととなりました。

坂本先生の考え方、つまり「企業は関わる人を幸せにする」ために存在するという哲学、そして「五方よし経営」に深く共感しました。社員とその家族、ビジネスパートナーとその家族、顧客、地域社会、株主・銀行、すべてが幸せになるような経営をすべきだという考え方は、私が目指している「周囲の人たちが充実し笑顔でいる状態」にピッタリと合致しました。

しかしながら、これを実践しようとすると多くの困難が立ちはだかります。社員の状態が良いように見えた矢先に、社員の応援者である家族にも応援してもらえる会社にしたいと思ったとき、実は社員の状態が思わしくないという意見を耳にしたり、一歩進んで二歩下がるような感覚に陥ることもあります。

人財塾で出会った多くの経営者から、経営の道は決して最初からスムーズに進むものではなく、苦しい体験を通じて人に向き合いながら作り上げてきたという話を聞きました。

人財塾で印象に残った講義は二つあります。一つは「易経」、私は元々易経を占いの一種と思っていましたが、実際には「自然の法則に従うべし」という教えだということを学びました。もう一つは「感情労働」、人間の複雑な真理に寄り添い、結果だけでなくプロセスまでを評価するという考え方です。

会社・事業とは人とのつながりであり、経営とは、人との関わり、感情と向き合うこと。訪問させていただいた企業の経営者にも「経営とは人で悩むことだよ」と聞きました。その考え方に私は強く共感し、「人を大切にする経営」、人の感情と向き合い、尊重し合う場を作ることに全力で取り組んでいきます。

最後に、人財塾の5期生として、坂本先生、そしてサポートしてくださった先生方、事務局の皆様、支援してくださった企業の皆様、同期の仲間、きっかけを作ってくださった榎戸さん、皆さんに心から感謝申し上げます。

株式会社スカイアーク 代表取締役 平栗 健太郎

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