「責任あるサプライチェーン等における人権尊重」①

2022年9月、経産省等により「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」が策定されました。

 現在、格差や貧困の拡大、気候変動等の環境問題の深刻化、感染症の拡大や紛争など一国のみで解決できない世界的な問題が生じており、これに対して国際社会は、これらの問題の解決に向けて、社会に大きな影響力をもつ経済活動において、基本的人権の尊重を大原則とすべき方向で動き始めています。

 欧米では、企業活動における人権尊重を遵守する法整備を進めはじめています。日本においては、法整備はしていないものの、ガイドラインを策定するなどして、企業に人権尊重の実践を促しています。そして、その対象は大手企業のみならず、中小、零細、個人事業主も対象となる旨、ガイドラインには明記されています。

しかし経営者にとっては、「理念は分かる!確かに大切なことだと思う。でもいったい何をすればいいの?」という思いを抱くのが率直なところだと思います。実際に、上場企業でも実践できているところは半数に満たないと言われています。そのような声を受け、経産省は令和5年4月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のたえの実務参照資料」をホームページにアップしました。

そこでこのブログでは、数回に分けて、この実務参照資料に基づき、企業の具体的な取組方法について共に学んでいきたいと思います。

企業が取り組むべき課題は大きく分けて次の2つです。

 (1)人権方針の策定及びその実践

 (2)人権デュー・ディリジェンスの実施(人権DD)

 人権方針の策定とは、まさに我が社の経営理念に基づく固有の人権方針を策定することです。

 人権DDとは、我が社、グループ会社、サプライヤーを含む取引企業等における人権侵害のリスクを確認し、評価することを意味します。

 次回より、それぞれの具体的な取組みについて検討していきたいと思います。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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