「日本活性化プロジェクト」は違法か?

昨日(2023年10月18日)、ヤフーニュースにて、「タニタが6年前に始めた社員のフリーランス化『日本活性化プロジェクト』の今」という記事が載っていました。

タニタが2017年から希望者を対象に、社員が退職して業務委託契約に切り替える新人事制度を導入しました。

その心は、というと、企業を実質的に引っ張っている全体としては少数の社員について、赤字会社であればこれらの人の給与を上げることができず、その結果、優秀な社員の方から順に辞めていってしまう、そのような優秀な社員にとどまってもらうために、経済的に手取額を増やす方策はないか、と考えてのことだといいます。

 他の記事によれば、独立した社員は、実際に概ね20%以上の手取り増が確認されたとのことです。

 これらの記事をみれば、会社も社員もWin-Winの関係に見えます。実際に、独立した社員から、6年間、労基法違反の訴えもありません。

そして社長は、このような仕組みを他の会社にも広めていくべきであると主張し、国もフリーランス新法を制定し、あたかもその後押しをしているように見えます。

 しかし、制度のみを真似ることは危険です。

 記事を見ていると、タニタでは、社員の自主性を重んじ、後押しをし、またしっかりフォローをしている様子が見受けられます。

けっしてこの制度を道具として利用しているのではないと思われます。

 一方で心ない経営者が、同様の制度をとり、半強制的に社員を独立させ、過大な業務を委託し、実質的に長時間労働をさせるというような事態も容易に想像できます。そのようになれば、「日本活性化プロジェクト」は一気に評判を落とすことになるでしょうし、必ず法規制を受け、違法となっていきます。

 多様化の時代にこのような仕組みもありえます。特に社員の働き方がテレワークに移行できている業態では、そのような制度と親和性があるように思います。

その結果、社員は、副業ができたり、手取り収入を増やしたり、自由な働き方ができたりする可能性が生まれます。

 しかし一方で、独立した社員の自由が制限されたり、過重労働となるようなことがあってはなりません。そのために経営者は、独立した社員に対して、一層の配慮を心がける必要があります。経営者のあり方が問われるのです。

 経営者のあり方如何によって、違法性が生じるのです。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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