「お客様は神様です」から「お客様は大切な人です」の時代へ
「理不尽な値下げ交渉には一切応じない!」株式会社さくら住宅相談役の二宮生憲さんの創業以来の徹底した方針です。まだ「カスタマーハラスメント」という言葉が世の中に出る以前から、二宮相談役は社員を守るために、この方針を貫いてきました。
「お客様は神様」と言われていた時代からです。
令和3年厚生労働省は、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を策定し、公表しました。このマニュアルで、「カスタマーハラスメント」とは、「顧客等からのクレーム・言動のうち、当該クレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なものであって、当該手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されています。
もとよりお客様からのクレーム、苦言は当社のとって大切なアドバイスになる場合も大いにあります。そのため、クレーム、苦言も真摯に受け止めることが社員には要求されます。
一方で、要求の内容が妥当でないものや、そのクレーム・苦言の態様が社会通念上不相当な場合にまで、それに対して社員に応じさせることは、社員に対して精神的・肉体的な負担を強いることとなってしまいます。社員を大切にする経営では、このようなカスタマーハラスメントに対して、経営者自身が毅然とした態度を示すことが大切なのです。
マニュアルでは、「内容の妥当性を欠く場合」として、「企業の提供する商品・サービスに瑕疵・過失が認められない場合」や、「要求の内容が、企業の提供する商品・サービス の内容とは関係がない場合」が例としてあげられています。
また社会的相当性を欠く手段・態様としては、次のような内容が挙げられています。
次の場合は、仮に要求内容が妥当性であっても、不相当とされる可能性が高いものです。
・身体的な攻撃(暴行、傷害)
・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
・威圧的な言動
・土下座の要求
・継続的な(繰り返される)、執拗な(しつこい)言動
・拘束的な行動(不退去、居座り、監禁)
・差別的な言動
・性的な言動
・従業員個人への攻撃、要求
また、商品交換の要求や金銭補償の要求であっても、その程度によっては不相当となる場合があります。
「お客様は神様です」と言われていた時代がありました。しかしお客様は大切にしなければなりませんが、神様ではありません。
これからは、「お客様は、大切な人です。」と考えるべきです。
そして、経営者は、社員を一番、お客様をその次に大切にする方針がなければなりません。
(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)
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