部下や若手の意見を聞く姿勢

人を大切にする経営を実践されているインテグリティな経営者は、有能な部下を恐れることなく、自分の周りに有能な部下がいると言われています。

 この有能な部下とはどのような部下をいうのでしょうか。きっと、経営者の発言を鵜呑みにするのではなく、自分で考え、自らの意見を持ち、そして自らの意見を経営者や周りの人にきちんと表明できる人ではないでしょうか。

 19世紀の哲学者でありジョン・スチュアート・ミルは、「自由論」の中で、物事の真理に近づくには、自由な論争が必要だといいます。

「人間は、討論と経験によって、自分の誤りを正すことができる。経験によってだけではない。経験をどう解釈したらよいかを示すための討論もなければならない。」つまり、相対する意見を交わすことによって、その意見はより深まり、真理、正解へと近づくということだと思います。

 しかし、社員は、上司や経営者に対して、自らの意見を言うことはかなり難しいと思ってしまうのではないでしょうか。特に日本人はそのように思ってしまう傾向が高いとのことです。権力格差という言葉があります。権力格差とは、「それぞれの国や制度や組織において、権力の弱い成員が、権力が不平等に分布している状態を予測し、受け入れている程度」と言われます。単純化して言ってしまえば、権力の差を弱い側の人間が容易に受け入れてしまう程度を指しています。社会心理学者のヘールス・ホフステードの調査に寄れば、日本は、アジアの中では格差が小さい方ですが、オーストリア、スイス、ドイツ、オランダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、アメリカよりも、格差が大きいとされています(https://hofstede.jp/6dimentionsmodel_pdi/ The Culture Factor より)。つまり欧米の企業よりも日本の企業の方が、部下や若手が上司や経営者に意見を言うのが難しい環境にあるということです。

 経営者や上司は、このような社会背景等を踏まえて、より積極的に部下や若手の意見を聞けるような組織作りをしていくこと大切になります。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

 

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