ジョブ型は働き手を時間から 解き放つか?

2020年6月18日日経新聞朝刊第1面に

「コロナと企業変わる土俵(3)もう時間に縛られない」

との記事が掲載されました。

記事の中でほぼテレワークに移行したK社を紹介し

「働く場所や時間は社員の自由。具体的な数字に基づいて

会社と交わす「契約」の達成具合で給料が決まる。」

として「工場労働を前提とした『時間給』に縛られては

日本は世界から取り残されかねない。

働き手を時間から解き放つときが迫っている。」と結んでいます。

働く内容さえ決まっていれば「働く場所や時間は社員の自由」

というのは、一見社員にとっていいように見えます。

しかし、このような事が出来るのは自らの仕事に自信があり、会社と

対等な関係で交渉ができる一部の社員に限られるのではないでしょうか。

同じ仕事をするのでも、5時間で終わらせることができる人もいれば、

15時間かかってしまう人もいます。

仮にその仕事の平均時間が8時間であるとして、

上司から「この業務は8時間で出来る業務であるから、

明日の朝までに会社に提出して下さい」といわれた社員の中で、

「自分は15時間かかるので2日下さい」と交渉できる人は

ほとんどいないのではないでしょうか。

職場での勤務では、このような場合、上司や先輩が本人の仕事の

様子を見ながら、アドバイスをし、時間が間に合わないようであれば、

先輩が仕事を引き取ったりすることだってあったはずです。

しかし、テレワークではそれが見えません。

命令された社員は15時間かけて翌朝までに作業を

終わらせようとするのではないでしょうか。

それでもその社員は「時間から解き放たれた」といえるのでしょうか。

ジョブ型のテレワークの場合には、社員のスキルを

一定程度以上に上げるための教育と、個別の社員の事情、特性、

能力そして実際の仕事の時間を十分把握しながら、

業務を決める必要があります。

ジョブ型テレワークは、個別の社員毎に対応するきめ細かい配慮が必要です。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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