理念を総会決議で?!

3月28日、サイボウズは定時株主総会で、23歳から52歳まで、新卒1年目、アメリカ国籍社員、女性5人を含む17人の取締役を選任しました。これに先立つ2月18日の日経新聞に「多様性に関するお詫び 弊社の取締役が、3人のおじさんだった件について。」と題する広告を出していましたので、ご覧になられた方も多かったと思います。

 この総会では、上記取締役の公募を見越して、取締役の員数上限撤廃の定款変更をしていました。このような大胆な方針を打ち出したのは、同社の2月24日の「お知らせ」によれば、取締役を『理想の番人』として会社をマネジメントするという役割を担う者として位置付けたことによるものだそうです。つまり取締役という職務を定義し直したことによるものです。

 「社長は、社長という仕事をする社員のことをいい、社員は、社員という仕事をする社員のことをいう。」を実践しているともいえる取組だと思います。

 一方で、この総会では、経営理念を株主総会の決議事項とする旨を定款に加える決議もしています。先ほどの「お知らせ」によれば、「第18条 当会社は、株主総会の決議によって、当会社の理念を制定、変更または廃止することができる。」との条項を加えました。これもかなり思い切った変更です。

 経営理念とは、その企業の存在目的や存在価値を社内外に示したものです。

 経営理念を株主総会決議事項とするということは、株主もその理念を我が事として企業を応援するという意味をもつ一方、株主の意向によって、その会社の存在目的や存在価値が変わってしまうリスクを持つということです。よほど株主との信頼関係が強くないとできないことだと思いますし、職業柄どうしてもリスクの方が気になってしまいます。

 今後、この会社がどうなっていくのか注視していきたいと思います。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士 山田勝彦)

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