ふくや川原俊夫の生き様が教えてくれる「運」のつかみ方

2018年5月31日に、フジTV『奇跡体験!アンビリバボー』で、人を大切にする経営学会 川原正孝常任理事のお父さんで、味の明太子のふくやの創業者・川原俊夫の人となり、明太子誕生までの秘話、明太子の製造法公開などのいきさつが放映されました。
早速、学会員の皆さんに共有化し、自分自身も予約録画して、夜中に見ましたが、人として、企業として何が大切なのかを再確認できました。

私がふくやを知るのは、慶応ビジネススクールの当時学長だった小野桂之介教授に教えていただき、16年前の訪問したのが最初です。
そして、川原俊夫創業者(以下俊夫)の話を知り、こんな人がいるのか・・と正直驚きでした。そして、最初に執筆した「感動する会社はなぜ、すべてがうまく回っているのか?(マガジンハウス)」に敬意を持って掲載しました。

今回、映像を通して、俊夫の生き様を再度目の当たりにして、ついつい忘れがちになり、なかなかできない本当に人として企業として大切なことを思い出してくれました。
俊夫の生涯は、TVでもコメントしていた長男川原健、元ふくや代表の本にも詳細に書かれています。

もう一つ、私自身は、まだ、40年近く前の高校生の時代に読んだ本の内容を思い出します。ある意味、私の座右の名著だと思います。
それは、幸田露伴の「努力論」(当時、岩波文庫)で今は、下記のように他の出版社からも、現代版にしたわかりやすい表現の本が出されています。

幸田露伴が、「努力論」の中で、書いた運がいい人の特徴は次の三つの福を実践している人だというのです。
「惜福」
惜福は、たまたま自分に与えられた福を使い付くし、取り尽くしてしまわないといった意味合いです。企業に当てはめれば、稼いだ利益を使い果たしてしまうのが、惜福の知恵のない企業で、正当なこと以外に使わないのが、惜福です。言われてみれば当たり前ですが、全て使ってしまえば、いざという時、チャンスやピンチの際にも対処できません。
「分福」
分福は、自分にきた福を一人占めしない。一部は、人に分け与えるようにする。この分福の工夫によって、より大きな福が来ると露伴は言います。昭和の名経営者松下幸之助氏は、「周りにも、儲けさせな、あきまへんがな~」と言いました。いい会社の企業のトップは、儲かったお金を従業員に分け、協力会社に無理な要求はしません。

植福」
自分が生きている間は、その恩恵をこうむることはなくても、子孫の役に立つといった世代を越えた福です。樹木で言えば、種を播いて増やしていくことによって、他人のためにもなるし、子孫のためになります。地域貢献や社会貢献は、まさに植福です。その企業に直接の利益をもたらせなくても、地域や社会全体に大きな利益をもたらします。また、この精神は、人類の文明の進歩に繋がるのです。

俊夫の生き様を見ていると、まさに、三福を実践した人だと思います。

お風呂で、俊夫が、健に、次のように言い聞かせている場面がありました。
「いいか、人にしてやった恩は、忘れてしまいなさい。見返りなんか期待してはダメだ。但し、受けた恩は、絶対に忘れてはダメだぞ!」

逆に、運を遠ざけるのが、経営効率のみを重視した経営です。
財務的な指標を企業活動の結果としないで目的とすると、お客様に嘘をついたり、取引先に常識を越えた無理な要求をしたり、社員が犠牲になり、傍目から見ても嫌な会社になってしまうことがあります。そして、結果的には、売上や利益を上げよう、株主の利益を増やそうといった行為が、実は、その両方を実現することに、最も遠いことになってしまうのです。
福を呼ぶどころか、坂本先生は、
「誰かの犠牲の上に成り立つ企業は、決して長続きしない」
と日頃から言っていますが、それなりに、人生経験を重ね社会に出てからの34年の短い間ですが、企業の盛衰を見てくると、そのことを実感します。

俊夫は、10年の月日をかけた明太子が売れて利益が出ても相変わらず、質素な暮らしでした。(惜福)
しかし、ドラマの中では、他界した際、一切財産が残っていなかったとありました。
それは、俊夫が、火事で焼け出された人を自宅で面倒を見る、10年かかって開発した明太子の製法を惜しげもなく、周りに教える、博多のために、節税はおろか、青色申告で多額の税金を払い、さらに、利益の大半を寄付をしたからです。(分福と植福)

本人も家族にも、金銭的な資産は残りませんでしたが、生誕100年を過ぎた今でも、本に書かれたり、今回のように全国放送のTVで取り上げられるといった「共感」「信頼」「信用」「感謝」といった見えざる資産を残したのです。

結果として、俊夫の生き様が、博多が明太子の原料であるスケソウダラの原産地でもないのに、約300社もの明太子の会社が集積する名産となり、地域に大きな福をもたらしたのです。

人を大切にする経営が、経営の王道であることを証明しています。

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