▼未払い給与、何年間請求できる?企業・労働者、時効巡り対立

▼未払い給与、何年間請求できる?企業・労働者、時効巡り対立

2018年12月3日付け日経新聞朝刊の記事です。
2020年に民法が改正され、これまでバラバラだった債権の時効が、
原則、「知ったときから5年」となりました。
つまり、5年間は時効消滅しません。
いつでも裁判を起こせることになります。
ちなみに、現在の民法では、給与の時効期間は1年です。
これに対し、労基法は115条で賃金債権の時効期間は2年です。
つまり2年間は、いつでも不足賃金を請求できることになっており、
民法よりも請求できる期間が長く労働者にとって有利です。
ところが、民法の改正により時効期間が一律5年間となると、
労基法の時効期間2年は、むしろ労働者にとって不利益となります。
つまり他の債権なら5年間は請求できるのに、
賃金については2年間しか請求できないことになるのです。
そこで、労働者側は、民法改正に合わせて5年にすべきといい、
使用者側は、実態把握ができる限度があるので、
2年とすべきと議論になっているところです。

▼賃金の時効が問題となるのは?
しかし、そもそも、賃金債権が時効にかかるというのは
どういうことでしょうか。よほど経営が悪くならない限り、
通常の賃金の支払いが2年以上遅れることはありません。
通常問題となるのは、残業代(時間外手当)が不払いのまま、
後日になって、それが発覚する場合です。
このような事態が生じてしまっていることは大変残念なことです。
これまで中小企業では、なかなか社員の労働時間を適切に把握できず、
その結果として、後日に残業代未払の請求をまとめて
受けるようなことが多くありました。

▼あるべき姿
経営とは、とても難しく、仮に一時期にまとめて残業代の支払いが
請求されれば、多くのキャッシュフローをその支払いに
当てなければなりません。5年もまとめて支払いを受けるとなると、
会社の存続自体に関わります。まだ、法律は調整されていませんが、
5年に統一される可能性もあります。
ここに書かれた事態に陥らないためにも、適時適切に社員の残業を
把握するよう改めて兜の緒を締め直す必要があります。
またもし万一、不払残業代が確認できた場合には、
すぐにその解消をすべきです。現在の法律で、2年以上経っていても、
時効は会社から「時効の援用」(時効により消滅するとの主張をすることです)
をしなければ、時効により消滅することはありませんので、
仮に2年以上経ってしまっても、きちんと清算を尽くすことが望まれます。
いい会社は、そもそも残業がない。仮に残業があっても、
このような事態にならないために最善の制度設計をし、
労働時間を把握していると思います。
それでも、万一この点でも問題があったとしても、
その後の対応で幾らでも正しい経営ができると思います!

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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