働き方改革と就業規則⑪
働き方改革と就業規則⑪
▼時間外労働の限度基準と特別条項付き36協定
 働き方改革法の以前は、時間外労働について、
 厚労省により限度基準が設けられていました。限度基準は
 ① 1週間15時間
 ② 2週間27時間
 ③ 4週間43時間
 ④ 1ヶ月45時間
 ⑤ 2ヶ月81時間
 ⑥ 3ヶ月120時間
 ⑦ 1年間360時間
 しかし、当時は「特別条項付き36協定」を社員との間で締結すれば、
 臨時的な場合に限った特別な事情があるときは、
 この制限を超えていいとされていました。
▼長時間労働と疾病
 このようにある意味無制限となっていた結果、
 長時間労働をしたために脳、心臓、精神に疾患が生じるケースが多くなり、
 これが労災になるかが争われるようになってきました。
 そして、これらのケースを医学的かつ統計的に分析した結果、
 時間外労働と疾病との関係で、
 労災が認められるための基準が公表されました
 ① 発症前1ヶ月の残業時間が100時間超の場合
 ② 発症前2ヶ月~6ヶ月の間の残業時間が
 80時間超の場合
 これが「過労死ライン」と呼ばれる基準です。
▼働き方改革法は最低限の基準
  働き方改革法では、この「過労死ライン」に合わせて、
 36協定の特別条項を設けても、
 「1ヶ月に100時間未満」
 「複数月(2ヶ月~6ヶ月)の平均で80時間以内」
 との基準が明確化されました。
 そして「過労死ライン」を超えて働かせた場合には、
 罰則の対象となりました。批判の多い働き方改革法ですが、
 この点では一定の評価ができる改正になったとも言えます。
 しかしこれは、ギリギリの基準です。人の体は人ごとに違います。
 「過労死ライン」はあくまで平均値を基準としたものであり、
 人によっては、この基準にいかなくとも各疾患の
 発症リスクはあります。法律を守ればよいというのではなく、
 最低限の基準であるとの認識が必要だと思います。
(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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