契約書は誰のためのものか

契約書は誰のためのものか

▼デジタル法務で省力化~契約書不備AIが指摘
いよいよ弁護士業界にもデジタル化が現実化し、
今年の4月からAIによる契約書の内容を点検する
サービスが始まったらしい(2019年8月14日付け日経新聞)。
このAIは、契約書を読み込ませると、
1秒ほどで自社が不利になる可能性のある箇所を指摘し、
修正のための文例も表示するという。
もはや中小企業法務の契約書チェックの仕事はなくなりそうだ。

▼契約書は何のために作るのか
本来、売買契約、請負契約、金銭消費貸借契約など多くの契約は、
契約書がなくても、口頭でも成立する。
それでも契約書の作成が必要とされるのは、
①いざという時の責任がどちらにあるか、
②具体的な契約の実施(履行)をどのような手順で行うのか、
を文書化しておき、できるだけ紛争を避けるためにある。
この中で①の責任の所在についてはAIで十分チェック
可能であるが、②契約の実施の工程については、
それぞれの契約内容によって異なることから、
現在のAIでは十分チェックはできないであろう。

▼誰のための契約か
もう一つ問題なのは、AIのチェックが自社が不利となる
可能性の内容の指摘に留まる点である。
そもそも契約関係に入ろうとする者は、
お互いを信頼しているから契約をするのであって、
相手が気づかないのをいいことに、少しでも自分に有利なように
契約書を作成しておこうというのは、信義にもとる。
契約で重要なのは、自分にとっても、相手にとっても
不利益とならないよう公平なバランスある契約にすることである。
もし万一、何か起こった際、相手が知らない当方にとって
有利な条項が入っていたとしたら、その問題自体に対しては
有利な解決は出来るかもしれないが、取引上の信頼を失い、
今後の取引に支障が生じ、場合によってはこのような
結果だったことが他の取引先にも漏れ、
取引がどんどん縮んでしまうこともあり得る。
相手にとっても不利ではない契約を結ぶことは、
取引先を大切にする、という意味だけでなく、
自社の信頼を守ることにもなる。

(学会 法務研究部会 常務理事 弁護士山田勝彦)

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