他者のために働く

最近読んだ本に「GIVE&TAKE「与える人」こそ成功する時代」(アダム・グラント著)というのがあります。

 様々な示唆に富む内容が書かれた著書ですが、その中で交渉に関する実験についての記載がありました。

 それは、どうやったら自分の年俸交渉を有利に進められるかという実験です。自分の年俸交渉は、自分のことであるが故に、とても難しい交渉となります。会社側から、君の働き方はこうだから、今年の年俸は、〇〇にしようと思う、と言われて、その値上げ交渉はどうやったらできるのか、という問題です。

 この実験を行ったカーネギーメロン大学の経済学者リンダ・バブコックは、ある一定の示唆を被験者に与えることで、その被験者の交渉能力が格段に上がったという実験結果を得ます。その示唆とは、自分の年俸を交渉すると思うのではなく、自分の「恩師」となったつもりで交渉するように、というものだったそうです。つまり自分事として交渉するのではなく、第三者として交渉するということです。この実験結果、身をもって体験しています。私は職業柄、当然にお客様の立場にたって交渉することには、相応のスキルと経験を持っています。ところが、いざ自分の交渉事となるとめっきり力が発揮できません。よく弁護士が裁判の当事者になってしまう場合に、他の弁護士に自分のことを依頼するのも同じ理由だと思います。

 自分のこととなると、人は十分な交渉力を発揮できないのです。

 しかし、これは交渉の場面だけではないと思います。経営も同じではないでしょうか。経営者として自分の成功のみを思い描いていると、決して成功できないのではないでしょうか。人を大切にする経営が、人を大切にした結果、業績も上向きになるのは、この心理も大きく影響しているように思います。社員とその家族のため、社外社員とその家族のため、お客様のため、社会のために、と思って経営していくから、大きな力を得て、素晴らしい成功を収めるのだと思います。 そしてこの他者のために働くという思いは、経営者だけでなく、社員一人一人ももつことができると、その会社はとてつもなく大きな力を得ることができるのではないかと思うのです。

  (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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