「持ち帰り残業」について

自社の優秀な営業マンが、月曜日の朝、上司に自分が作成したプレゼンの資料を手渡しながら、「土日と二日間かけて貫徹しました!自信作です。確認してください。」と言ってきたら、上司はどう対応をすべきでしょうか。

上司としては、会社内で対応できるようにかなり前からプレゼンの依頼をしていました。なぜ休日に徹夜をしなければならなかったのか分かりません。内容を見てみると、確かに良く出来ていて、かなりの時間がかかったことがうかがえます。本人のやる気は評価したいところですが、かといって休日に仕事をしてもらうのも困ります。

 皆さん、ご承知のように昨年、パナソニック株式会社が自社の社員が過労死した事案について、裁判によることなくご遺族と和解をし、「再発防止の取り組み」についてのプレスリリースをしました。その対応は、私からすれば、当たり前のことと思いますが、なかなか企業としては踏み出しづらいことですので、マスコミ等ではこの対応を評価する報道がなされました。

 ここで取り上げましたのは、そのプレスリリースに記載されていた内容がとても参考になるからです。

 このプレスリリースには、〈本事案発生の原因〉として、6つの指摘がされていました。

⑴ 会社の期待の押し付けではなく、部下の価値観や人格を尊重し、心情をよく理解した上で、部下の自己実現を支援するという責任者/上司の役割認識が欠如していたこと

⑵ 部下の状況や日々の変化に気づかず、適切な対応を取ることができなかった上司の感度の低さと認識の甘さがあったこと

⑶ 上司や周囲に対して、何でも相談できるような職場風土や上司・部下間の信頼関係を構築することができていなかったこと

⑷ 上司が果たすべき役割と責任を実践するためのマネジメントやコミュニケーションに関するスキル教育が十分にできていなかったこと

⑸ 持ち帰り残業等、会社外での労働時間を把握する仕組みが未整備であったこと

 大変参考になる指摘であり、自分の身においてみると冷や汗が出てしまう指摘もあります。このような点に気付き、適切な仕組み、対応をしていけば、確かに再発防止ができるのではないかと思います。

 最初に掲げた例ですが、私であれば次のように言おうかと思います。

「休日にこれだけの内容のプレゼンを作成してくれて、ありがとう。

 ところで、どうして会社が社員の労働時間を管理していると思う?

 それはね、単に時間外手当を把握するだけではなく、皆さんの健康のために皆さんが働き過ぎにならないよう見守る責任が会社にはあるからだよ。会社で所定労働時間を定めているのは、一日の働く目安なんだと思うんだ。それ以上働くと、いずれ社員の健康を害したり、会社以外の生活環境を害したりしないようにする目安となります。だから、仕事はできるだけ所定労働時間内でするようにして欲しいんだ。もし今回のように、色んな仕事のために時間内で対応できないようなことが起こりそうだったら、是非、早めに相談して欲しい。僕も、あなたに過剰な仕事とならないか日々注意するから、お互いに気を付けようね。

 プレゼンの内容もとても良い出来だと思います。これでプレゼンをしましょう。よろしくね。」

    (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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