働き方の多様性と法規制

昨年いわゆる「偽装請負」の労働者を受け入れていた企業に対し、それらの労働者を直接雇用するように実質的に強制する判決が出されました。労働者派遣法40条の6には、労働契約申込みみなし制度、という規定があります。

労働者の派遣を受ける際に、次のような労働者を受け入れていた場合は、その労働者を雇用する旨の契約の申込みをしたものとみなされる規定です。

どのような場合かというと

  •  警備など派遣禁止業務での派遣受け入れ
  •  無許可業者からの派遣受け入れ
  •  事業所単位の発見期間制限の違反
  •  個人単位の派遣期間制限の違反
  •  「偽装請負」での労働者受け入れ

偽装請負とは、本来は通常の同労契約で受け入れるのと同じ条件で、請負契約を本人と締結し、雇用契約を回避する方法であり、従来より企業側の雇用にかかる諸経費を削減する方法として利用されてきたものでした。昨年の裁判では、この点が問題とされ、雇用契約が成立していると判断されました。

このような違法な偽装請負は当然に許されないことです。ただ今日的には、難しい問題があり、むしろ雇用される側が自ら望んで個人事業主として請負契約を締結したいという働き方も出始めているからです。気軽に働きたい、兼業をしたい、一定のプロジェクトのみにかかわりたいなど、動機は様々ですが、このような雇用される側からの請負契約をどこまで認めるのかという点については、法整備は間に合っていません。ある面で自由な働き方は、社会として今後、許容されるべきものとも思えます。

このような自由な働き方と偽装請負のような違法は働かせ方との調整として、本来、このみなし制度は積極的に利用されるべきではないかと思います。

つまり、雇用される側に選択権があり、雇用される側は、いつでも請負契約を選択することもできるし、労働契約を選択することができるとするものです。確かにこのようにすると、会社の方での人員の確保や雇用の管理等は難しくはなりますが、少子高齢化の中、多様な人財を登用するためには、このような考え方をむしろ前向きにとらえていくという考え方が必要なのではないかと思います。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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