日本語の難しさ

いよいよ明日から2日間、「人を大切にする経営学会第10会総会・全国大会」が開催されます。そして来年の事業計画に坂本光司先生が予てより提案しておりました、人を大切にする経営の観点からの人本経営学用語辞典の編纂が始まるとのことです。

 そこで今回は難解な日本語について用語という面から見ていきたいと思います。法律実務家は裁判等で公用文例の用語を使用します。そのため「公用文用字用語の要点」という辞典が司法研修所に入所した記念に贈答され、それを確認しながら法律や行政文書等の用語を学ぶことになります。それでは法律や行政文章において、「断つ」と「絶つ」はどう使われているのでしょうか。

 「断つ」は、切り離すこと、断ち切ることで、つながっているものをいくつかに切り離すこと、続けてきたことをやめること、途中で遮ることとして使われます。

 一方「絶つ」は、続いているものをそれ以上続けないこと、つながっているものをそこでやめる、終わりにすることだといいます。

 このように見ると、同じように見えますが、「断つ」には途中で分断するという点に重点が置かれていて、「絶つ」はこれ以上続けない、終わりにすることに重点が置かれていることになります。

 同じ、「交際をたつ」でも、「交際を断つ」という場合は、たとえば、外国などに行くために一時交際を中止するような場合に利用し、「交際を絶つ」は、もう二度と交際をしない場合に利用されます。

 行政文書で問題となるような場合で、たとえば「国交を断つ」のか「国交を絶つ」のかで全く意味が異なってきます。国交を断つという場合は、一時的に断つのであって、今後復活する可能性を残しますが、「国交を絶つ」場合は、もう二度と国交を結ばないことを意味します。

 もっとも、これは行政文書等の公用文で使用されていて、新聞等の報道では、必ずしもこのような意味で使用していない場合もあります。なお、新聞等の記載が法律とは異なるものに、「被告」という呼び方があります。民事裁判では、訴えた方を「原告」といい、訴えられた方を「被告」といいます。どちらも正、不正の意味はありません。

これに対して、刑事事件で起訴された人は「被告人」といいます。「人」が付いているのです。この場合は犯罪を疑われて起訴された人になります。しかし新聞では刑事被告人のことを「被告」と記載します。このような誤った日本語の使い方をされると、民事裁判で訴えられた方は、「被告」と呼ばれて、「自分は犯罪者じゃない!不愉快だ」というようなことになってしまいます。

 日本語は本当に難しいので、注意して使いたいと思います。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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