改めて「家族的経営」を考える

日本の中小企業は家族的経営をしてきたと言われることがよくあります。

しかし、「家族的経営」といっても明確な定義はみあたりません。少なくとも「家族経営」とは異なります。家族経営は、一般には同族経営、親族経営を指しています。

よって、「家族的経営」とは、企業組織の在り方として使われており、単に同族経営や親族経営、オーナー会社を意味していません。あえて言えば「家族主義的経営」という方がわかりやすいかも知れません。

 しかし、日本の経済低迷を受けて、家族的経営に対して批判的な論説を目にすることが多くなりました。

 その中で、本日はジョシュアA.ルナさんがHarvard Business Reviewに掲載した「『家族的な企業文化』は組織を蝕み、従業員の成長を妨げる」を検討しつつ、家族的経営を考えてみたいと思います。

 同論文では、家族的経営の問題として次の3点を挙げています。

  • 「個人とプロフェッショナルの境界線がぼやけ始める」として、いわば上司と部下との間に同調圧力が高まること、またリモートワーク等になると上司が部下を信じ切れず、マイクロマネジメントを始めてしまうとしています。
  • 「肥大化した忠誠心は害をなす」として、職を失わないために非倫理的行為に関与しやすい運命共同体となり、このような環境で社員のバーンアウトが生じ、生産性が下がると指摘します。
  • 「従業員が都合良く利用される力関係を生む」として子は親に従わざるを得ない環境が生じている、と指摘します。

もっともこれらの批判は、「家族的経営」だから生じてしまう現象とはいえず、ルナさんの家族的経営の批判は的外れだと思います。

家族的経営とは、単に運命共同体的、家父長的組織を意味するものではありません。

家族的経営とは、会社の関わる全ての人の幸せの追求・実現を目指す結果、その会社の組織風土して根付く家族的な暖かさを意味するものだと思うのです。「家族的な暖かさ」は、好まない人も無理矢理同調させる運命共同体ではなく、思いやりの心をもって、会社に関わる全ての人と向き合い、接することです。そのような会社において、ルナさんがしてきするような家族的経営の問題は生じません。

ではなぜルナさんは、このような指摘をしているのでしょうか。

この論文の冒頭に次のように書かれています。

「雇用者は、生産的で好業績を上げる従業員を求めている。」

この論文は、「高い業績の実現が企業経営の目的」だということを前提にしているのです。ルナさんが指摘する問題点は、家族的経営に原因があるのではなく、業績重視の企業経営観を前提としていることに問題があるのです。

会社の目的がかかわる全ての人の幸せの追求・実現にあるのであれば、家族的経営の弊害を排除できると思うのです。

(学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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