テレワークの難しさ

大手企業やIT系の企業はテレワークを実施しているようですが、業態や規模によってはテレワークが難しい企業も多いのではないかと思います。

 テレワークに親和性があるのは、営業職、IT関係やパソコン等を利用する業務である一方、難しいのは接客業、建設・工事現場、工場や研究職などでしょうか。

 ところで、テレワークの難しさは、勤務状況が見えにくいというところにあります。現在の法制では、使用者は勤務時間を適正に把握すべき義務があります(労働基準局長通達「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」)。テレワークの社員が、本当に働いているのかを「監視」するためではなく、社員の健康維持のために労働時間を把握しなければならないのです。

 職場であれば、実際に働いているところを見聞できますが、テレワークであれば、働いているところを直接見ることはできません。

現在、テレワークの労働時間の把握のために利用される方法として、PCの内臓カメラによる在席の確認、PCの操作ログの把握、ソフトの利用時間やメールの送受信を分析することによる方法、マウスやキーボードの動きによる記録など様々な方法が開発されています。

しかし、これらの仕組みは、あくまで労働時間を把握するために利用すべきであり、過度の監視やプライバシーの侵害にならないように利用しなければなりません。当初マイクロソフト社がメールやチャットなどのやりとりから「生産スコア」を数値化する方法を開発しましたが、個人のプライバシーを侵害するとして、個人が分からないようにする変更を余儀なくされたということがあったそうです。また働いているか否かを業務内容ではなく、時間だけで把握しようとすると、社員は「信頼されていない」という思いを募らせ、かえって会社との関係性が悪くなってしまいます。

どのようなシステムを何の目的で利用するのか、経営者と社員との間でしっかりコミュニケーションをとり、納得の上でのシステム利用を利用することが大切です。

労働時間の把握も、社員を大切にする精神を貫くことが大切なことだと思うのです。

(学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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