パワハラ(その3)~テクハラとテル(TEL)ハラ

4月7日、日経デジタル版に「無自覚の『テクハラ』、部下でも加害者に」との記事が出ていました。

 テクハラ、「テクノロジー・ハラスメント」です。「ラインくらい自分で送って下さいよ。そんなことも出来ないんですか。よく技術系の会社でこれまで働いてこられましたねえ」などと、部下が上司にいうことは、れっきとしたハラスメントです。パワハラ(その2)でもかきましたが、ハラスメントは、「優越的な関係」にある者が行うことが要件です。

部下の方が上司よりもIT関連の必要な知識や経験が豊富で、上司も部下の協力を得られなければ、円滑なIT関連のものを利用して業務を行うことが出来ない場合には、部下の方が優越的だと評価される場合があります。同僚でも同じです。したがって、そのような人が、IT関係が利用出来ないことを理由として、出来ない人に対して、侮辱的な言動をすることはハラスメント(パワハラ)にあたります。

これに対して、最近聞く「テル(TEL)ハラ」はどうでしょうか。

「テル(TEL)ハラ」とは、会社宛の電話に出ることは、苦痛な業務なのに、「会社宛の電話は新入社員が受けるべき」というのはハラスメントだというものです。もし、新入社員の中に、不安障害等があり、電話に出ることができないという者に対して、無理に電話応答をさせることは、確かにパワハラになります。  

しかし単に電話に出るのに苦痛を感じるとか、出るのが苦手な社員に対して、電話に出ることが業務であると命じることは通常の業務上の指示の範囲であり、そのことをもってハラスメントということはできません。そんなことを言い出せば、企画や営業などの職種について、社員に対して、苦手な職種に就かせること自体がハラスメントとなってしまうことになります。それでは仕事すら出来なくなります。

 このように「テクハラ」と「テル(TEL)ハラ」とは全く異なります。

何でも嫌なことはハラスメントと言えばいいという風潮を作ることは決して社会のためになりません。そのように曖昧化することによって、本来のハラスメントに気付きにくくさせてしまうからです。

ハラスメントという言葉は、正確に使っていくべきです。

 (学会 法務研究部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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