NHK大河「光る君へ」を仕事に活かす 枕草子

『枕草紙』は、『源氏物語』に比肩する平安文学の双璧です。鴨長明の『方丈記』、兼好の『徒然草』と並んで日本三大随筆と称されています。

『枕草子』とは、平安時代中期に中宮定子に仕えた女房、清少納言により執筆されたと伝わる随筆。ただし本来は、助詞の「の」を入れずに「まくらそうし」と呼ばれたとされています。

「虫は」「木の花は」「すさまじきもの」「うつくしきもの」に代表される「ものづくし」をはじめ、日常生活や四季の自然を観察、作者が出仕した中宮定子周辺の宮廷社会を振り返った日記など多彩な文章からなっています。

平仮名を中心とした軽妙な筆致の短編が多いですが、中関白家の没落と清少納言の仕えた中宮定子の身にふりかかった不幸を感傷的にも綴っています。作者の洗練されたセンスと、事物への鋭い観察眼が融合して、『源氏物語』の心情的な「もののあはれ」に対し、知性的な「をかし」の美世界を描いています。総じて簡潔な文で書かれ、現代人も読みやすい内容です。

『枕草子』のタイトルの由来として、内大臣伊周が妹中宮定子と一条天皇に高価だった料紙を献上したとき、「帝の方は『史記』を書写されたが、こちらは何を書こうか」という定子の下問を受けた清少納言が、「枕にこそ侍らめ」と即答し、「ではお前に与えよう」とそのまま紙を下賜されたと記されています。肝心の枕とは何を意味するのかについては、古来より研究者の間で論争が続き、いまだに解決を見ていません。
備忘録説:備忘録として枕元にも置くべき草子という意味

春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山際、すこし明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。
夏は夜。月のころはさらなり。やみもなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光て行くも、をかし。
秋は、夕暮ぐれ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、からすの寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛びいそぐさへあはれなり。まいて、雁などのつらねたるが、いと小さく見ゆるは、いとをかし。日入りはてて、風の音、虫の音など、はた、言ふべきにあらず。
冬はつとめて。雪の降りたるは、言ふべきにもあらず。霜のいと白きも。またさらでも、いと寒きに、火など急ぎおこして、炭持てわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶けの火も、白き灰がちになりて、わろし。
(人を大切にする経営学会:根本幸治)

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