「プリンシプル」という考え方

ンプライアンスでは、最近「プリンシプル」ということが頻繁に言われています。プリンシプルとは、直訳すれば、原理・原則ということです。コンプライアンスでは、「プリンシプル」は、社会や事業分野において存在する規範を言語化し、それを関係者の間で広く共有することを通じて、本人が自らのとるべき行動を判断するうえで指針とすることが期待される行為規範や行動原則だといわれています。

 では、ルールとプリンシプルはどう違うのでしょうか。

 ルールは、法令等の規範そのものであり、本人が守るべき最低限の規律です。ルールは画一的で定型的です。これに対してプリンシプルはルールを少しはみ出してでも守るべき行動原則となります。より柔軟な考え方であり、ルールを超えたあるべき姿の基準という位置づけになります。

 ルールは、内容を把握し、理解する対象です。これに対してプリンシプルは、単に内容を理解するだけでなく、最終的にはそれを自社の行動原則に落とし込む作業が必要となります。プリンシプルと経営理念との関係、経営戦略との関係の位置づけを明確にし、それを具体的な行動規範(行動原則)として内容を確定し、役員への周知、社員への教育、日常業務の実践、浸透度合いの検証・評価、評価結果の基づく改善等のPDCAサイクルを回すことで、プリンシプルが最終的に企業文化として根付いていくことになります。

 このようなことは人を大切にする会社でも実践されています。

 たとえば、2023年、第13回日本で一番大切にしたい会社大賞経済産業大臣賞を受賞したサラヤ株式会社では、公的研究費の運営・管理に関わる研究員および事務職員の行動指針として次の通りに定めています。https://www.saraya.com/research/management/model.html
1.研究員等は、公的研究費の使用にあたって、法令、ガイドライン、当社が定める規定および社内ルールを遵守しなければならない。

2.研究員等は、公的研究費が国民の税金その他多方面からの支援によるものであることを認識し、適正かつ効率的・効果的に使用しなければならない。

3.研究員等は、研究計画に基づき、公的研究費の計画的かつ適正な使用に努め、実態のない経費の使用、目的外使用、期間外使用などの不正な使用を行ってはならない。また、事務職員は、研究活動の特性を理解し、効率的かつ適正な事務処理を行わなければならない。

4.研究員等は、公的研究費の使用にあたり、取引先との関係において国民の疑惑や不信を招くことのないよう公正に行動しなければならない。

5.研究員等は、公的研究費の取扱いに関する研修等に積極的に参加し、法令、ガイドライン、当社が定める規定および社内ルールの理解に努め、また、相互の理解と緊密な連携を図り、協力して公的研究費の不正使用を未然に防止するよう努め、公的研究費不正使用防止計画を踏まえて行動しなければならない。

 まさにこのようなことがプリンシプルを具体的に行動原則として明確化した例になります。

 (学会 法務部会 常任理事 弁護士山田勝彦)

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