NHK大河「光る君へ」を仕事に活かす 光源氏誕生(源氏物語)

どの天皇のご治世であっただろうか、女御、更衣がたくさんお仕えしておられた中に、それほど高貴な身分ではない方で、とりわけ帝のご寵愛を受けておられる方がありました。

自分こそは帝の寵愛を得ようと自負しておられた女御の方々は、この方を目にあまる者として、さげすみ嫉妬なさる。同じ身分の更衣やそれより低い身分の更衣たちは、いっそう気が気でありません。朝晩の宮仕えにつけても他の人々の心を動揺させるばかりで、恨みを受けることが積もり積もった結果であったのであろうか、たいそう病気がちになってゆき、心細い様子で実家に下がりがちであるのを、帝はますます愛しいとお思いになって、他人の非難をも気にすることがおできにならず、世間の悪い先例にもなってしまいそうなご待遇です。中国でも、こういうことが原因で、世の中が乱れ悪い状態だったのだと、世間でも苦々しく、楊貴妃の例を引き合いに出すに違いなくなってゆくので、まことにきまりが悪いことが多いけれど、帝のお心遣いの比類がないことを頼りにして、更衣は宮仕えしておられる。更衣の父の大納言はすでに亡くなっていてしっかりした後見人がいないので、頼る所がなく心細そうな様子です。

帝と更衣は前世でもご因縁が深かったのでしょうか、この世に比類なく清らかで美しい玉のような光り輝く男の子がお生まれになりました。帝は早く会ってみたいと待ち遠しくお思いになって、急いで参内させて若宮をご覧になると、めったにないほどすばらしいご容貌です。

第一皇子は、右大臣の娘の弘徽殿女御がお産みになった方で、後ろ盾がしっかりしていて、疑いなく皇太子になられる方であると、世間でも大切にお仕え申しあげているけれど、この若宮のつややかなお美しさにはお並び申せそうもなかったので、帝は第一皇子を後継者としてのご寵愛し、この若宮は秘蔵の子とお思いになって大切になさいます。

皇太子にはこの若宮がお就きになるのかもしれないと、第一皇子の母君の弘徽殿女御はお疑いになります。更衣はおそれ多い帝のご庇護を頼りに申しあげながら、更衣は弱々しく頼りない様子なので、帝の寵愛のためにかえって味わうことになったつらい思いをなさります。            その更衣のお部屋は桐壷です。    (人を大切にする経営学会:根本幸治)

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